産総研、CNTで配線作製-基板の微細穴に転写・挿入
日刊工業新聞より。
産総研、CNTで配線作製-基板の微細穴に転写・挿入
産業技術総合研究所はストロー状の炭素材料、カーボンナノチューブ(CNT)を使った配線作製技術を開発したと
発表しています。
AISTプレスリリース:カーボンナノチューブのインプラントによる新たな配線作製技術
別の基板で作製したCNTを配線用基板に作製した直径100-300nmの小さな穴に転写・挿入して配線化するという方法です。
従来法に比べ、約10倍電気を通しやすく、銅などの金属に変わる高密度集積回路(LSI)の
縦配線として応用が見込めるとの事です。
方法としては下記になります。

図1 CNT配線作製の流れ
まず、熱酸化膜(SiO2)付きシリコン(Si)基板上に化学気相合成(CVD)法によって多層CNTを合成する(図1a)
触媒として、チタン(1 nm)とコバルト(2 nm)の積層膜を真空蒸着法により基板上に形成した。原料はアセチレンをアルゴンで希釈したガスであり、基板温度は850 ℃である。
次に、合成したCNT束の先端部に金属膜(今回は金)を堆積してCNT束の支持膜とする(図1b)。
その後、CNT下層のSiO2膜をバッファードフッ酸により除去して、支持膜付きCNT束を合成用の基板から分離する(図1c)
分離した支持膜付きCNT束をプラグ用の穴を開けた基板に転写する(図1d)
その際、アセトンなどの揮発性の液体を基板とCNT束の界面に塗布しておくと、
その蒸発の際の毛細管力により支持膜付きCNTが基板に密着し、さらに、CNTがプラグ用穴に
挿入(インプラント)される(図1e)。
次に、CNT束を転写した基板にスピン・オン・グラス(SOG)を塗布し(図1f)、化学機械研磨(CMP)により
金属膜とCNTの穴からはみ出した部分をSOGと共に除去し平坦化して、インプラントCNTプラグを作製した(図1g)。
プロセスとしては直感的に理解しやすい方法であることが分かります。
物理的な作業が多いですね。
プロセスとしては煩雑になるため、効率よく作業できるような方法の開発が必要になると思われます。

図2
(a)基板上に合成されたCNTのSEM像
約800 nmの長さのCNTが垂直方向に配列して基板上に形成されている。本数密度は3 x 1011 cm-2。
(b)金属支持膜付きCNT束が挿入されたプラグ穴付き基板の断面SEM像
プラグ穴深さは左からそれぞれ300 nm、500 nm、700 nm
金支持膜を付けたため、挿入可能なCNTの長さは約500 nmとなり、穴の深さが500 nm以下であれば
プラグ底まで挿入できることがわかる。用いたプラグ穴は、上部が徐々に広がる構造になっているため、
穴と穴の間にあるCNTも穴に集めることができる。
この例では、穴のピッチP((穴の直径+穴の間のスペース)/穴の直径)は2であり、
最大P2倍程度まで(今回は1.2x1012 cm-2程度まで)、プラグ穴の中のCNTの密度を高めることができる。

図3 CMPにより平坦化されたCNTプラグの平面SEM像
転写に用いた支持膜などが除去され、平坦化されている。

図4 今回開発したインプラントCNTプラグと、従来手法によるCNTプラグ、タングステンプラグの抵抗
今回開発したCNTプラグでは、直接合成のCNTプラグよりも1桁以上抵抗が改善していた。
タングステンプラグの抵抗より高いが、CNTプラグの抵抗は用いたCNTの抵抗に依存するため、
CNTの品質や密度の向上により、今後改善可能である。
言及しているように密度やCNTの品質を上げていくことが今後の課題かと思われます。
挿入の作業の際にCNTにダメージを与えたりはしないのかも気になりますね。

図5 今回開発したインプラントCNTプラグの抵抗とCNTプラグ/ビア配線抵抗の報告値との比較
他研究機関の結果はCNT直接合成によるもの。
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産業技術総合研究所はストロー状の炭素材料、カーボンナノチューブ(CNT)を使った配線作製技術を開発した。別の基板で作製したCNTを、配線用基板に作製した直径100ナノ―300ナノメートルの小さな穴に転写・挿入して配線化する。従来法に比べ、約10倍電気を通しやすい。銅などの金属に変わる高密度集積回路(LSI)の縦配線として応用が見込める。
熱酸化膜付きのシリコン基板上で多層CNTを化学気相成長(CVD)で合成し、多層CNT束の先端に金属膜を重ねる。金属膜を支持層としてシリコン基板からCNTを外し、穴を開けた配線用基板に差し込み、化学機械研磨で表面を磨くとCNTでできた縦配線が完成する。CNTを挿入できる穴の深さは最大500ナノメートル。
CNTを別の基板で作るため850度Cという高温で合成でき、高品質なCNTを配線に利用できる。これまでは配線用基板にあらかじめ作製した穴の中でCNTを合成していたため、反応温度が400度Cと低く、CNTの品質が悪く電気抵抗値も高かった。
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産総研、CNTで配線作製-基板の微細穴に転写・挿入
産業技術総合研究所はストロー状の炭素材料、カーボンナノチューブ(CNT)を使った配線作製技術を開発したと
発表しています。
AISTプレスリリース:カーボンナノチューブのインプラントによる新たな配線作製技術
別の基板で作製したCNTを配線用基板に作製した直径100-300nmの小さな穴に転写・挿入して配線化するという方法です。
従来法に比べ、約10倍電気を通しやすく、銅などの金属に変わる高密度集積回路(LSI)の
縦配線として応用が見込めるとの事です。
方法としては下記になります。

図1 CNT配線作製の流れ
まず、熱酸化膜(SiO2)付きシリコン(Si)基板上に化学気相合成(CVD)法によって多層CNTを合成する(図1a)
触媒として、チタン(1 nm)とコバルト(2 nm)の積層膜を真空蒸着法により基板上に形成した。原料はアセチレンをアルゴンで希釈したガスであり、基板温度は850 ℃である。
次に、合成したCNT束の先端部に金属膜(今回は金)を堆積してCNT束の支持膜とする(図1b)。
その後、CNT下層のSiO2膜をバッファードフッ酸により除去して、支持膜付きCNT束を合成用の基板から分離する(図1c)
分離した支持膜付きCNT束をプラグ用の穴を開けた基板に転写する(図1d)
その際、アセトンなどの揮発性の液体を基板とCNT束の界面に塗布しておくと、
その蒸発の際の毛細管力により支持膜付きCNTが基板に密着し、さらに、CNTがプラグ用穴に
挿入(インプラント)される(図1e)。
次に、CNT束を転写した基板にスピン・オン・グラス(SOG)を塗布し(図1f)、化学機械研磨(CMP)により
金属膜とCNTの穴からはみ出した部分をSOGと共に除去し平坦化して、インプラントCNTプラグを作製した(図1g)。
プロセスとしては直感的に理解しやすい方法であることが分かります。
物理的な作業が多いですね。
プロセスとしては煩雑になるため、効率よく作業できるような方法の開発が必要になると思われます。

図2
(a)基板上に合成されたCNTのSEM像
約800 nmの長さのCNTが垂直方向に配列して基板上に形成されている。本数密度は3 x 1011 cm-2。
(b)金属支持膜付きCNT束が挿入されたプラグ穴付き基板の断面SEM像
プラグ穴深さは左からそれぞれ300 nm、500 nm、700 nm
金支持膜を付けたため、挿入可能なCNTの長さは約500 nmとなり、穴の深さが500 nm以下であれば
プラグ底まで挿入できることがわかる。用いたプラグ穴は、上部が徐々に広がる構造になっているため、
穴と穴の間にあるCNTも穴に集めることができる。
この例では、穴のピッチP((穴の直径+穴の間のスペース)/穴の直径)は2であり、
最大P2倍程度まで(今回は1.2x1012 cm-2程度まで)、プラグ穴の中のCNTの密度を高めることができる。

図3 CMPにより平坦化されたCNTプラグの平面SEM像
転写に用いた支持膜などが除去され、平坦化されている。

図4 今回開発したインプラントCNTプラグと、従来手法によるCNTプラグ、タングステンプラグの抵抗
今回開発したCNTプラグでは、直接合成のCNTプラグよりも1桁以上抵抗が改善していた。
タングステンプラグの抵抗より高いが、CNTプラグの抵抗は用いたCNTの抵抗に依存するため、
CNTの品質や密度の向上により、今後改善可能である。
言及しているように密度やCNTの品質を上げていくことが今後の課題かと思われます。
挿入の作業の際にCNTにダメージを与えたりはしないのかも気になりますね。

図5 今回開発したインプラントCNTプラグの抵抗とCNTプラグ/ビア配線抵抗の報告値との比較
他研究機関の結果はCNT直接合成によるもの。
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産業技術総合研究所はストロー状の炭素材料、カーボンナノチューブ(CNT)を使った配線作製技術を開発した。別の基板で作製したCNTを、配線用基板に作製した直径100ナノ―300ナノメートルの小さな穴に転写・挿入して配線化する。従来法に比べ、約10倍電気を通しやすい。銅などの金属に変わる高密度集積回路(LSI)の縦配線として応用が見込める。
熱酸化膜付きのシリコン基板上で多層CNTを化学気相成長(CVD)で合成し、多層CNT束の先端に金属膜を重ねる。金属膜を支持層としてシリコン基板からCNTを外し、穴を開けた配線用基板に差し込み、化学機械研磨で表面を磨くとCNTでできた縦配線が完成する。CNTを挿入できる穴の深さは最大500ナノメートル。
CNTを別の基板で作るため850度Cという高温で合成でき、高品質なCNTを配線に利用できる。これまでは配線用基板にあらかじめ作製した穴の中でCNTを合成していたため、反応温度が400度Cと低く、CNTの品質が悪く電気抵抗値も高かった。
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![]() | カーボンナノチューブ・グラフェンハンドブック (2011/08/19) フラーレン・ナノチューブ・グラフェン学会 商品詳細を見る |
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この記事へのコメント
>ブランドル様
コメントありがとうございます。コメント返せておらず申し訳ありません。
治金関係は勉強不足の分野ですが、治具・金型の特性は製品の精度や特性に深く関わってきますね。
こういった加工の下地となるような技術については目立ちませんが非常に重要だと思います。
コメントありがとうございます。コメント返せておらず申し訳ありません。
治金関係は勉強不足の分野ですが、治具・金型の特性は製品の精度や特性に深く関わってきますね。
こういった加工の下地となるような技術については目立ちませんが非常に重要だと思います。
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冶金への憧れ - ブランドル - 2014年03月11日 19:06:13