有機ELの「次」狙え 次世代ディスプレー競争

日本経済新聞
有機ELの「次」狙え 次世代ディスプレー競争

QD_color_image1.jpg
波長の短い光を当てれば粒子の大きさに応じて発光色が変わる

電子部品材料を手掛ける昭栄化学工業は色再現性の高い次世代ディスプレー技術「量子ドット」フィルム用の
半導体ナノ粒子を年内に量産するとしています。量子ドットは有機ELの先の技術として注目を集めており、
同社は材料技術で先行する狙い。ディスプレーが液晶から有機ELに転換する中で、
有機ELの「次」を見据えた動きが始まっているようです。


昭栄化学は有害物質のカドミウムを使わない独自の製法を確立し鳥栖事業所(佐賀県鳥栖市)に
約10億円を投じて量産ラインをつくるとしています。インジウムとリンを熱反応させて半導体ナノ粒子を
成長させる製法を確立したとのこと。韓国サムスン電子の子会社や米ベンチャー企業などの製法と比べて
製造コストを下げて安定供給できる強みがあるとしています。

鳥栖事業所で2017年中に生産設備を整備し、18年中にも月産で数百キログラムの材料生産を始めるとのこと。
ナノ粒子を含む溶液をフィルムメーカーや感光剤(レジスト)メーカーなどに量子ドット溶液として供給。
安定量産することで1グラム5千円程度に抑えられるとしています。

量子ドットディスプレーは特殊な材料が光の波長を変化させて、青から緑、赤の色の三原色を
鮮やかに再現できるのが特徴。現在主流のディスプレー構造は、青色発光ダイオード(LED)の光を
量子ドットフィルムを通して緑や赤の色を出す仕組みです。フィルムは数~十数nmの粒子状結晶で構成され、
省電力で高い輝度、広い色域を再現できます。

nikkei_QD_microLED_image1.jpg

量子ドットは有機ELよりも広い色域を持ち、より美しい映像を楽しめると期待されてきました。
ただ毒性のあるカドミウムを使ってナノ粒子を制御する必要があったため活用が進んでいませんでした。
ソニーも一時自社ブランドのテレビに採用する意向でしたが、有害物質が含まれることで断念した経緯があります。

民間調査会社の矢野経済研究所によると、昭栄化学などが手掛ける量子ドット向け電子材料の出荷量は
2017年に前年比2.6倍に拡大。「中国の複数のテレビメーカーが採用することで市場が大きく伸びる」(同社)と
予測しています。

■マイクロLED、台湾勢が先行

米アップルによるiPhoneへの採用で、有機ELパネルは本格普及期を迎えています。
色鮮やかで端末形状の自由度が高いとして液晶パネルからの置き換えが進んでいますが、
韓国、台湾、中国ではさらに先を見据えた研究開発が活発化しています。
ただ、長く業績不振が続いてきた日本のディスプレー産業は有機ELでも出遅れ、
さらに次世代技術への布石も打てないままとなっています。

「有機ELでは韓国勢に水をあけられた。我々は『マイクロ発光ダイオード(LED)』で挽回しよう」――。
台湾のマイクロLEDの部材メーカー幹部は同業各社に呼びかけています。

Sony_microLED_display_credis_image3.jpg
ソニーはマイクロLEDを使った大型ディスプレーを手掛ける

マイクロLEDは、赤・緑・青色に光る微細なLEDを敷き詰めて映像を表示するディスプレーです。
屋外広告からウエアラブル端末まで大小様々な用途に活用可能。普及の鍵はLED素子の価格となっていますが
台湾、中国のメーカーが急速にコストを下げており、有機ELの次として急浮上しています。

シャープは5月に鴻海(ホンハイ)精密工業グループと共同で米国の技術ベンチャーを買収すると発表。
アップルも米半導体大手クアルコムから買い取った台湾の研究所で自社のウエアラブル端末に搭載する
マイクロLED技術の開発を進めているもようです。

ソニーは既に「クリスタルLED」の名称で展開。小型パネルを数十~数百枚組み合わせて
幅20メートルほどの巨大ディスプレーを構成。自社開発したLED素子が光源で、色鮮やかな映像を映し出せるとし
美術館のデジタル展示やパブリックビューイング、監視モニターとして販売しています。

ディスプレー技術動向に詳しいテック・アンド・ビズ(大津市)の北原洋明氏は
「20年代半ばには量子ドットとマイクロLEDがディスプレーの本命になる可能性がある」と分析しています。
国内でも昭栄化学だけでなく、素材メーカー大手は次世代技術のトレンドを読みながら
研究開発を続けているとのこと。

ただ韓国や台湾勢との設備投資競争で疲弊してきた国内ディスプレーメーカーは
研究開発投資を絞り後手に回っています。電機大手の事業を統合してきたジャパンディスプレイは
有機ELへの転換期に直面し苦境が鮮明です。
潮流を読む情報収集力と手厚い開発投資力がないと、日進月歩のディスプレー産業では
生き残ることは困難なようです。

当ブログ関連記事
【抜粋記事】海外で盛り上がる量子ドットとマイクロLED
【抜粋記事】期待高まるマイクロLED、実用化の課題は「量産技術」

    

関連記事
スポンサーサイト

この記事へのコメント

トラックバック

URL :

プロフィール

miyabi

  • Author:miyabi
  • 2013/1よりディスプレイ周りの技術情報を掲載。

    Twitter @deep2black
カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
最近の記事
タグリスト
カテゴリー
アーカイブ
リンク
人気記事
ブログ内検索
関連書籍
RSSフィード
Twitter