自動車開発に100年ぶりの「革新」なるか 「自動車用電子ミラー」がもたらすインパクトを専門記者が解説(追記)

日経ビジネス
自動車開発に100年ぶりの「革新」なるか
「自動車用電子ミラー」がもたらすインパクトを専門記者が解説


Regulation No46_door-ele-mirror_image1
「Regulation No.46」ではカメラで確認すべき範囲や表示までの遅延時間、ディスプレーの設置位置などを定めている。日本の保安基準も2016年6月18日に改正された

カメラとディスプレーを用いた電子ミラーが解禁となり、自動車用ミラーが大変貌を遂げる。1980年代にフェンダーミラーからドアミラーに移行してクルマのデザインが大きく変わった。鏡のない「ミラーレス車」の登場は、自動車関連業界に大きなインパクトを与える




2016年6月18日、欧州や日本で電子ミラーが解禁された。ドアミラーやルームミラー(後写鏡)の代わりに、カメラとディスプレーで周囲を確認することが認められた


期待感が高まっている電子ミラーだが、規則・基準の整備完了に伴い、すぐに自動車メーカーが量産に乗り出すわけではない。乗り越えるべき課題が残っており、各社が目指す量産化のターゲットは18年ごろ


電子ミラーは、ルームミラーとドアミラーに分けられる。R46では、乗用車を対象に、それぞれ「クラスI」「クラスIII」と呼ぶ。特に恩恵が大きいのが、ドアミラー(クラスIII)の電子化だ。主な利点として、①車両デザインの自由度が増す②夜間や雨天時などの視認性向上③死角の低減④空気抵抗を減らす──などが挙げられる


車両デザインの自由度向上は、自動車の魅力を大きく引き上げるはず


電子ミラーは、カメラで撮影した映像をディスプレーに表示する前に画像を処理する。従来のドアミラーでは視認性が低下する状況でも、画像処理でそれを軽減できる


死角の低減も大きなメリットだ。画角が20〜30度とされるドアミラーに比べて、広角の映像を撮影できる。撮影範囲は自動車メーカーごとに異なるが、40度ほどが目安になりそう


日産も、電子ミラーの空気抵抗に関する性能の高さに期待を寄せる。同社は燃費以上に、「ドアミラーから発生する風切り音の低減に注目している」(日産の空力技術者)


ガソリン車であればエンジン音がある程度かき消してくれるが、静粛性を売りとするEVでは不快音の発生源はとにかく抑えたい


利点の多い電子ミラーだが、実用化には課題も残る。関係者が口をそろえるのがコストの高さ


自動車部品メーカーの市光工業によれば、電子ミラーのコストは「普及当初は従来のドアミラーに比べて5〜10倍」(同社イノベーション統括グループ先行開発部部長の大貫宏靖氏)になる見込み


ディスプレーの設置場所の候補となっているところには、既にエアコンの吹き出し口やエアバッグなどの部品が配置されている。自動車メーカーはプラットフォームのモジュール化を推進中で、電子ミラーの部品も部品共通化を前提に設計される。このため、電子ミラーを採用するのは全くの新型車か、モジュールの更新サイクルのタイミングに合致する車両になる


仏ヴァレオは、2018年に電子ミラーの量産を開始することを決めた。国内ミラー大手の村上開明堂も2018年度の量産を予定


電子ミラー市場には新規参入組も多い。その急先鋒がパナソニックだ。同社はドアミラー世界3位、スペインのフィコサ・インターナショナルと資本・業務提携した


部品メーカーが取り組む開発テーマは大きく2つある。従来の後写鏡と同等の表示・確認性能を備えることと、コスト増に見合う付加価値を提供できるかどうか


カメラでは60m後方を確認できるようにする。この要件を満たすためには、100万画素超のCMOSイメージセンサーが求められそう


ディスプレー側でも遅延を抑える。フレーム周波数が60ヘルツの品種が多いが、ジャパンディスプレイ(JDI)は240ヘルツ品を提案する。フレーム周波数が遅いと、動画がぼやけて見える。JDIの開発品は、フレーム周波数を4倍に高めることで「ぼやけ」を解消した


長期の信頼性も欠かせない。特にドアミラー部は、「風圧や振動などが直撃するため、想像以上に厳しい環境」(市光工業の大貫氏)だ。このため、「カメラの構造や取り付け方など、堅牢性のノウハウが品質を大きく左右する」(同氏)とみる。この他、ハッキングに対するセキュリティーの確保も必要


付加価値の一つとして、認識機能を持たせて死角検知や後方車両の警告ができるようにする動きもある。将来的には、電子ミラーのカメラを自動運転のセンサーとしても使えるようにする



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