【抜粋記事】非真空IGZO成膜の実現なるか、ミストCVDの可能性

日経テクノロジーオンライン
非真空IGZO成膜の実現なるか、ミストCVDの可能性

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図1 各種成膜法

第64回応用物理学会春季学術講演会、合同セッションK「ワイドギャップ酸化物半導体材料・デバイス」から高知工科大学 准教授の川原村敏幸氏の講演「時間的・空間的隔たり産み出すミスト流を用いた新反応制御技術の開発」を報告





非真空プロセスの課題には、(1)副反応と外乱の影響を無視できないことや、(2)高品質で均一な薄膜を作製するため原料流と雰囲気温度の厳格な制御が求められることがある


非真空プロセスは平衡反応プロセスになるが、汎用の平衡反応プロセスを利用して多元系機能膜を作製するには、多数の原料を同時に供給する必要がある。しかし、それぞれの原料の反応速度差や原料同士の複合反応により、成膜速度や組成比をうまく制御できず、設計通りの薄膜を作製することができないという問題が生じる


これらの技術的問題点を解決するために「ミスト」を用いた新たな薄膜作製法「ミストCVD」の開発を進めているのが、高知工科大学の川原村氏のグループ


この成膜法の特徴は、以下の通りである。

 ・非真空プロセス
 ・装置が簡易(特殊部品を必要としない)
 ・イニシャルコストや運用コストが低い
 ・ミストをガスのように制御可能



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図2 ミストCVDの装置構成

均一かつ高品質な薄膜の成膜には3つのポイントがある(図3)



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図3 成膜のポイント

これまでの主な開発成果は以下の通り。
 (a)ガラス基板上にミストCVDで成膜した酸化物半導体IGZOとゲート絶縁膜Al2O3(AlOx)膜による酸化物半導体TFTを作製



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図4 IGZO TFTの作製

(b)多重α-Fe2O3/α-Ga2O3量子井戸(MQW)を大気圧プロセスで形成



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図5 多重量子井戸の作製

単位体積当たりの液滴数が約1011個/m3、液滴径が約10μmの成膜条件では、液滴が気相中に約200μm間隔で分布しており、 衝突する可能性は限りなくゼロに近い。これらの時間的・空間的な隔たりを利用すれば、単相流体中で起こるような予測が困難な複雑な反応を無視し、多元(混晶)系機能膜の成膜速度や組成比を制御できるのではないかと考えた


マクスウェル・ボルツマン分布を用いてミストの速度分布を計算したところ、平均自由行程は4mm、液滴同士の相対速度は約10-4m/s、平均自由時間は46秒であることが分かった(図6)



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図6 ミストの平均自由行程

別々の溶液を利用しても混ざらない上に、液滴はライデンフロスト状態で液滴直下のみ反応するため、組成制御が可能である(図7)



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図7 ミストCVDによる組成制御

図8に、様々な機能膜作製技術の特徴とミストCVDの開発目標を示す



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図8 ミストCVDの可能性

上述の理論を基に構築した実験系を利用して作製した多元系材料(AlGaO)では、成膜温度を変更すると単調に成膜速度が増加している様子が確認され、複雑な反応を抑制できていることが示唆される(図10)



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図10 多元系材料(AlGaO)の組成制御

今後は、他の手法と同様に大面積にわたり均一で、原子レベルで高品質な成膜技術として、さらには他の手法では実現できていない反応制御可能な成膜技術として確立したいとしている



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