【抜粋記事】CFRPとCNFが「マルチマテリアル」設計の鍵となる

日経テクノロジーオンライン
CFRPとCNFが「マルチマテリアル」設計の鍵となる

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かつてトヨタ自動車においてCFRP製ボディーの実用化に携わった金沢工業大学教授 影山裕史氏に、CFRPとCNFの現状について聞いた。




──自動車業界におけるCFRPの動向は


影山氏:実用化が広がっています。一部の高級車向けボディーの材料としてだけではなく、いわゆる「環境対応車」の部品レベルで「MUST(必須)」のものが出てきています。例えば、ドイツBMW社はCFRPを使ったボディーを今後の軽量化ボディーの中核に据える考えを表明。
部品レベルでの採用を少しずつ進めているのが、トヨタ自動車。一気に増やすのではなく、市場での信頼性を確保しながら一歩ずつ前進する考え方。ここに来て「マルチマテリアル」設計がキーワードとして急浮上してきました。



──マルチマテリアル設計を施した自動車のボディーは、日本よりもドイツの方が進んでいる印象


影山氏:日本勢も頑張っているのですが、確かにドイツ勢の方が先行。例えば、先のBMW社の7シリーズはマルチマテリアルボディーの典型例。「適材適所」で使いこなし、従来にない軽量化を実現していることが特徴。CFRPはこのマルチマテリアル設計において、最も重要な鍵を握る材料になるはず。
マルチマテリアル化はいろいろな側面で進んでいます。車両サイズ、部品サイズ、そして、材料サイズで見たマルチマテリアル化があります。例えば、CFRPは炭素繊維(無機材料)と樹脂(有機材料)を組み合わせた複合材料です。これを繊維の径から見ると、μmサイズのマルチマテリアル化と判断することができます。さらに細かくnmサイズで見ると、セルロースナノファイバー(CNF)の世界が見えてきます。CNFの直径はnmサイズ。CNFも樹脂に混ぜて強化材となる点はCFRPと同じ。



──CNFはどのような材料なのでしょうか。


影山氏:CFRPと共に、実用化が期待される新たな材料。木材はセルロースとリグニンなどから成り、セルロースは木材の主成分の1つ。CNFは植物系のため、環境における炭素量に対して中立である、いわゆる「カーボンニュートラル」の材料。先述の通り、CNFの直径はnmサイズ。繊維がここまで小さくなると特性が変わってくる。
樹脂の中に混ぜると、細かく分散されることで、強度が高まります。波長が透過できるサイズ(小ささ)にして透明にすることもできます。これを、例えば自動車のピラーの材料に使えば、十分な強度を保ちつつ、視認性を高めることが可能です。CFRPでは出せないこうした特性も潜在的に持っていることが、CNFへの注目度の高さの背景。



──とはいえ、日本の自動車メーカーはまだまだ鋼を多く使っています。その点ではトヨタ自動車も変わりません。


影山氏:確かに、鋼は優れた材料ですし、日本は鉄鋼メーカーの技術力が高いという背景があり、日本の自動車メーカーの間には鋼に対する高い信頼感があります。これに対し、欧米では樹脂メーカーが強く、良い材料があれば使っていくという考えの企業が多い。



──日本企業はCFRPへの取り組みで遅れているのですね。


影山氏:遅れているかもしれません。日本では鋼に関して品質と価格、そして安定供給のバランスが取れています。CFRPのような新しい材料は、使った経験がないから生産現場でいろいろな課題が出てくる可能性がある。それでも軽量化などを進化させるには、乗り越えていかなければなりません。
例えば、CFRPは溶接ができないため、接着剤を使う必要があります。鋼には疲労限度がありますが、接着剤には明確な疲労限界が見えないと言われます。加えて、環境に敏感なところもあります。しかし、CFRPがメインの材料になってきたら、CFRPならではの構造や造り方、売り方になるはずです。それはまだ確立されていません。だからこそ、チャンスがあると言えます。



──逆に、なぜ欧米の自動車メーカーはCFRPの採用に積極的なのでしょうか。


影山氏:軽量化に対するこだわりが極めて強いからです。スポーツカーでは、燃費を改善することはもちろん、走行安定性を高めたい。車体を軽くして重心を下げる設計を狙います。 一方、環境対応車では、軽量化によって低燃費を実現したい。軽量化に対するこうした強いこだわりがあるために、欧米の自動車メーカーは自動車用のCFRPの生産に意欲を見せています。
例えば、BMW社は、ドイツの炭素製品メーカーであるSGLグループと合弁で炭素繊維の生産に乗り出しました。米Ford Motor社は、トルコDowAksa社と自動車用の炭素繊維を量産する技術の開発で協力しています。DowAksa社は、米Dow Chemical社とトルコの繊維メーカーAksa Akrilik Kimya Sanayii社の合弁会社です。
日本の材料メーカーも追随しています。東レは米国の炭素繊維メーカーであるZoltek Companies社を買収。帝人や三菱レイヨンも自動車用の炭素繊維の生産で動き始めました。
旧態依然とした鋼よりも、CFRPを使うことで得られる優位性を採る。そのための課題は何とか乗り越える。こうした取り組みが製品の価値やブランド力を高めると考えている企業が欧米には多いのでしょう。



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