NHKの有機EL素子、水・酸素に強く長寿命で省電力に(追記)
日経テクノロジーオンライン
NHKの有機EL素子、水・酸素に強く長寿命で省電力に

新開発の電子注入層材料を用いた逆構造有機EL(iOLED)素子(右)と、
2015年開発の同層材料のiOLED(左)を同電圧(約5V)で駆動した場合の発光の比較
日本放送協会(NHK)は2フレキシブルディスプレー向け赤色有機EL素子の
大幅な長寿命化と省電力化に成功したと発表しています。
また、この1世代前の技術で1年前に製造したフィルム基板のフルカラーディスプレーを
NHK放送技術研究所(NHK技研)が開催する「技研公開2016」に動態展示。
フィルム基板のディスプレーで封止をほとんどしなくても、
製造から1年以上、連続的に映像を表示可能になったことを示しています。

2015年に試作したフィルム基板かつフルカラーiOLEDディスプレー。
1年以上、大気下かつ封止なしで連続駆動しているという。

上のディスプレーの拡大写真
<課題を1つ改善すると別の課題が>
今回発表の有機EL素子は、NHK技研が2013年から発表している「逆構造有機EL(iOLED)」技術が基礎。
この構造のポイントは電子注入層の材料で、一般的な構造の有機EL素子の多くでは、酸化しやすい
フッ化リチウム(LiF)が用いられているのに対し、NHK技研は2013年時点のiOLEDでは、
「ポリエチレンイミン」と呼ばれる有機材料を採用したとしています。
この電子注入層材料は水分や酸素に強いという特徴がありましたが、その一方で駆動電流自体で
劣化する課題があり、連続駆動時の発光寿命(初期輝度1000cd/m2からの輝度半減期)はガラス封止時でさえ、
一般的な材料の1/10となる1000時間以下と短かったとのこと。
NHK技研は2015年には、発光寿命を改善したiOLED素子やフィルム基板のディスプレーを開発しています。
ところが、駆動電圧が2013年時点の3.9Vから5.6Vに増加し、内部量子効率が100%から70%に
低下してしまったとのこと。
<耐酸化性や耐水分、発光寿命、低電圧駆動の3拍子が揃う>
今回、赤色iOLED素子の電子注入層に新たな有機材料と添加剤を用いたところ、駆動電圧は3.7Vと低くなり、
内部量子効率は100%に戻り、発光寿命も1万時間以上と大きく改善したとしています。
「寿命が長く、(低電圧駆動による)省電力性が高く、かつ酸素や水分に強い3拍子揃った
有機EL素子の実現は世界で初めて」(NHK)とのこと。
今後NHK技研は、緑色や青色の有機EL素子で今回の赤色有機EL素子と同様な
省電力化と長寿命化の研究を加速させるとしています。
関連記事
(16/07/14追記)
EETimes:逆構造用いたOLED、赤色で1万時間以上の寿命実現
当ブログ関連記事
【SID】継続的な「酸化物半導体+有機EL」開発と、さらなる進化を遂げる「液晶」(その1)
【SID】NHKと日本触媒が大気に強い有機EL素子を開発、電子注入層などを改良
NHK、100日でも劣化しないシート型有機EL「iOLED」
NHKの有機EL素子、水・酸素に強く長寿命で省電力に

新開発の電子注入層材料を用いた逆構造有機EL(iOLED)素子(右)と、
2015年開発の同層材料のiOLED(左)を同電圧(約5V)で駆動した場合の発光の比較
日本放送協会(NHK)は2フレキシブルディスプレー向け赤色有機EL素子の
大幅な長寿命化と省電力化に成功したと発表しています。
また、この1世代前の技術で1年前に製造したフィルム基板のフルカラーディスプレーを
NHK放送技術研究所(NHK技研)が開催する「技研公開2016」に動態展示。
フィルム基板のディスプレーで封止をほとんどしなくても、
製造から1年以上、連続的に映像を表示可能になったことを示しています。

2015年に試作したフィルム基板かつフルカラーiOLEDディスプレー。
1年以上、大気下かつ封止なしで連続駆動しているという。

上のディスプレーの拡大写真
<課題を1つ改善すると別の課題が>
今回発表の有機EL素子は、NHK技研が2013年から発表している「逆構造有機EL(iOLED)」技術が基礎。
この構造のポイントは電子注入層の材料で、一般的な構造の有機EL素子の多くでは、酸化しやすい
フッ化リチウム(LiF)が用いられているのに対し、NHK技研は2013年時点のiOLEDでは、
「ポリエチレンイミン」と呼ばれる有機材料を採用したとしています。
この電子注入層材料は水分や酸素に強いという特徴がありましたが、その一方で駆動電流自体で
劣化する課題があり、連続駆動時の発光寿命(初期輝度1000cd/m2からの輝度半減期)はガラス封止時でさえ、
一般的な材料の1/10となる1000時間以下と短かったとのこと。
NHK技研は2015年には、発光寿命を改善したiOLED素子やフィルム基板のディスプレーを開発しています。
ところが、駆動電圧が2013年時点の3.9Vから5.6Vに増加し、内部量子効率が100%から70%に
低下してしまったとのこと。
<耐酸化性や耐水分、発光寿命、低電圧駆動の3拍子が揃う>
今回、赤色iOLED素子の電子注入層に新たな有機材料と添加剤を用いたところ、駆動電圧は3.7Vと低くなり、
内部量子効率は100%に戻り、発光寿命も1万時間以上と大きく改善したとしています。
「寿命が長く、(低電圧駆動による)省電力性が高く、かつ酸素や水分に強い3拍子揃った
有機EL素子の実現は世界で初めて」(NHK)とのこと。
今後NHK技研は、緑色や青色の有機EL素子で今回の赤色有機EL素子と同様な
省電力化と長寿命化の研究を加速させるとしています。
関連記事
(16/07/14追記)
EETimes:逆構造用いたOLED、赤色で1万時間以上の寿命実現
当ブログ関連記事
【SID】継続的な「酸化物半導体+有機EL」開発と、さらなる進化を遂げる「液晶」(その1)
【SID】NHKと日本触媒が大気に強い有機EL素子を開発、電子注入層などを改良
NHK、100日でも劣化しないシート型有機EL「iOLED」
- 関連記事
スポンサーサイト
この記事へのコメント
トラックバック
URL :