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阪大ら、外部量子効率16%の有機EL材料開発

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阪大ら、外部量子効率16%の有機EL材料開発

Osaka-Univ_TADF_EL-device_image1.png
オレンジ色に発光するOLEDデバイスの様子

大阪大学と英ダラム大学の国際共同研究チームは、緑~赤色発光を示す新規な
熱活性化遅延蛍光(Thermally Activated Delayed Fluorescence:TADF)材料の開発に
成功したと発表しています。



有機EL素子において、従来の蛍光色素材料を発光層として用いた有機ELデバイスは、
発光が励起一重項からのみ起こるため、最高25%の電気エネルギーしか光エネルギーとして取り出せず、
励起三重項の有効活用が必須であると考えられています。

これまで、重原子効果を活用したリン光材料(最高内部量子効率100%)や
三重項ー三重項消滅(Triplet-Triplet Annihilation: TTA)過程を活用したフォトン・アップコンバージョン法に基づく
有機ELが開発されてきましたが、リン光材料は希少な金属元素を含む錯体から構成されること、
またTTAは内部量子効率の最高理論値が62.5%に留まっていました。

Osaka-Univ_TADF_EL-device_image2.png
有機ELデバイスにおける熱活性化遅延蛍光過程

2012年に九州大学は、励起一重項状態(S1)と励起三重項状態(T1)のエネルギー差(ΔEST)が
極めて小さい分子を設計することで、一重項からの蛍光に加えて、三重項に補足されたエネルギーを
熱活性化遅延蛍光(TADF)として取り出し、従来の蛍光材料を用いた有機ELデバイスの理論限界値である
5%をはるかに凌ぐEQEを達成できることを明らかにしています。

それ以降、TADF材料の開発は安達教授らのチームを中心として世界各国で研究が盛んに進められていますが、
依然、新たな分子設計指針の確立・TADF発現過程の詳細な機構解明・低エネルギー(橙・赤・近赤外)領域の
発光を示すTADF材料の開発、などの課題が残っていました。

研究グループは、炭素・水素・窒素・酸素元素のみから成るドナー・アクセプター・ドナー(D-A-D)構造の
分子を設計・合成しています。導入するドナー部位の種類によって、発光色は大きく変化し、
緑~赤色のTADFを発することを明らかにしています。

また、詳細な吸収・発光スペクトル解析から、今回開発したTADF分子が励起状態において極めて強い
分子内電荷移動状態にあることや、TADFが励起一重項電荷移動状態(1CT)とアクセプター骨格に由来する
励起三重項状態(3LEA)の間の(逆)項間交差により生じていることを示唆する結果を得たとのこと。

Osaka-Univ_TADF_EL-device_image3.png
a)開発したTADF材料の分子構造、b)今回新たに確認されたTADF機構の模式図、
c)開発したTADF材料を発光層に用いた有機EL素子の発光スペクトル

これまで、1CTと3LEA間での項間交差(SOCT-ISC)によるTADF発光機構は報告されておらず、
同チームが今回世界で初めてこの機構に基づいたTADFを確認したことになります。
さらに、開発したTADF材料を用いて作製した有機EL素子は緑~赤色発光を示し、外部量子効率(EQE)は
最高で16%を達成しています。

また、発光材料を分散させるホスト材料を変えることで、エキシプレックス形成による発光の長波長化が可能となり、
特にPOZ-DBPHZを発光材料に用いた場合、近赤外領域(740nm)の発光を示し、これまでに報告されている
近赤外発光を示す有機ELデバイスの中では比較的高いEQE(~5%)を示すことがわかったとのこと。

今回の開発に成功したことにより、新たにTADF材料を開発するうえで、ドナーまたはアクセプターユニット単独の
三重項エネルギーやドナーとアクセプターの空間的な直交性を考慮した、より柔軟な分子設計が
可能になると期待されるとしています。

これにより、現在世界中で開発の進められている短波長側領域(深青~黄色)で発光を示す
TADF材料との併用により、屋内・外照明用の白色TADF発光デバイスの開発研究が躍進することが
期待されるとしています。

大阪大学ニュースリリース
新しい熱活性化遅延蛍光材料の開発に初めて成功!

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