高精細、曲がる画面… 有機EL支える日本の「黒子」 スマホ革新、パネル・材料・装置の技

日本経済新聞
高精細、曲がる画面… 有機EL支える日本の「黒子」 スマホ革新、パネル・材料・装置の技

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キヤノントッキの有機ELパネル製造装置は引く手あまた(新潟県見附市)

新潟県のほぼ中央に位置する見附市の県営工業団地に日韓中のパネルメーカーが
頻繁に視察に訪れる工場があります。
有機ELパネルの製造に不可欠な「蒸着装置」と呼ばれる機械で、競合を圧倒するキヤノントッキの本社工場です。
業界では「キヤノントッキの装置は2年待ち」といわれ、パネルメーカー同士の争奪戦が
起こっているほどになっています。


■サムスンが着目

本社工場で組み上げられるのが、真空中で有機材料を気化させて基板に付着させる蒸着装置。
「真空内でのミクロン単位の位置決め精度が強み。長年、幅広い精密機械を手掛けてきた実績が生きる」と
津上晃寿会長兼最高経営責任者(CEO)が胸を張る技術です。

同社の技術に早々に目を付けたのが韓国サムスン電子。サムスンは2000年代半ばから研究開発に本腰を上げ、
10年には自社製スマートフォン(スマホ)「ギャラクシー」向けに有機ELパネルの量産に入っています。
サムスンとの二人三脚で装置性能を磨いてきたキヤノントッキは、競合他社の追従を許さない
圧倒的なシェアを獲得しています。
現時点で「トッキの技術なくして高精細な有機ELパネルは作れない」とすらいわれているとのこと。

日本勢は液晶パネル製造装置の分野で高いシェアを持っています。
パネルが有機ELに切り替わっても、ニコンやキヤノンがほぼ独占する露光装置は必要となります。
アルバックや日立ハイテクノロジーズなど日系装置メーカーも安定受注が見込めるとされています。

また装置だけではなく、高機能素材に強みを持つ日本の化学メーカーが
有機ELの成長を支えています。

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「有機ELはフレキシブル型の実用化が追い風となり、年2~3割の高成長が見込める」。
と、2016年度から始まる3カ年の中期経営計画の説明会で、住友化学の十倉雅和社長は語っています。

住友化学が普及拡大を見込むのが、折り曲げたり畳めたりする次世代型のフレキシブル有機ELパネルです。
平面のパネルを曲げるには、発光素子を水分から守る封止ガラスやタッチパネルガラス、偏光板などを
柔らかい素材に置き換える必要があります。

住友化学は封止やタッチパネルガラスの代わりに使えるフィルムを開発しています。
液晶パネルで必要な厚さ80~100マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルの偏光板を使わず、
タッチパネルの上に塗って厚みを2マイクロメートルにできる新しい塗布型の偏光板を開発。
スマホの画面を保護するフィルム、偏光板、タッチパネルを複合した部材も製品化を検討しており
「遅くとも17年には出せる」と十倉社長は自信をみせています。

「顧客からの材料の引き合いをみると、18年までに出てくる有機ELパネルを搭載したスマホは
必ず折り曲げられる機種になる」。ある素材大手首脳はこう予測しています。
普段はコンパクトに畳んで、映像をみるときは広げてタブレット端末並みの大きさの画面で楽しむ。
全く新しいスマホが世に出れば、市場におけるインパクトは大きいとみられています。

■高温耐える樹脂

有機ELパネルはバックライトを使う液晶と異なり、自発光する材料を光源としています。
この発光のオンオフを制御する回路が描かれた基板には旭硝子や米コーニングのガラスが使われます。
回路を描く際に必要なセ氏500度以上もの高温に耐える必要があるからで、
普通の樹脂フィルムでは溶けてしまいます。

この高温に耐えられるのが「ポリイミド」と呼ばれる樹脂です。
ガラスと違い折り曲げることができ、フレキシブルパネルの実用化に大きく貢献します。
カネカや東レ・デュポンなどが手掛ける中、スマホ分野で先行するのが宇部興産です。
ポリイミドの原料から手掛け、高い合成技術を持つのが他社にない強みとなっています。
同社はサムスンディスプレーと折半出資でポリイミドを生産する合弁会社を運営し、
サムスンのスマホ「ギャラクシーS6 エッジ」に独占供給しています。

発光材料では出光興産が大手です。韓国LGディスプレーと二人三脚で開発を進めており、
サムスンディスプレーやジャパンディスプレイなど新たな販路の獲得を目指しています。
新日鉄住金化学や保土谷化学工業が寿命の短さが課題とされる青色の発光材料の性能向上で
しのぎを削っています。

10年以上前から「液晶の次」とされてきた有機ELですが、先導役を果たすべき電機大手は
巨額の投資負担を敬遠し、技術革新が停滞した経緯もあります。
素材各社からは「量産の期待を持たせておきながら肩すかしが続いた」との恨み節も聞こえてきているとのこと。

有機EL市場の立ち上がりにはパネル・材料・装置の各陣営の歯車がかみ合わうことが必須といえます。
米アップルが鳴らした号砲でちぐはぐだった歯車がかみ合い、急速に回転し始めています。

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