有機ELの長寿命化に貢献する標準ガスバリアフィルム

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有機ELの長寿命化に貢献する標準ガスバリアフィルム

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開発した標準ガスバリアフィルムの写真(左)と模式図(右) 出典:産業技術総合研究所

産業技術総合研究所(産総研)は、粘土とポリイミドを原料とする極めてガス透過性が小さい
標準ガスバリアフィルムを開発したと発表しています。水蒸気や酸素に触れることで劣化する有機化合物を使う
有機ELディスプレイや有機太陽電池などの長寿命化への貢献が期待されるとのこと。



有機ELディスプレイや有機EL照明では、プラスチックフィルム上に有機ELを形成すると、フィルムを透過した
水蒸気や酸素が有機ELを劣化させます。このことが原因で、十分な製品寿命を確保できない課題を抱えています。
有機太陽電池などの有機エレクトロニクスデバイスでも同様です。

この課題に対応するため、水蒸気や酸素を透過させないハイガスバリア層をプラスチックフィルム上に
コーティングして、有機エレクトロニクスデバイスの劣化を防いでいます。このハイガスバリア層には一般に、
水蒸気透過度が10-6g m-2 day-1
(g m-2 day-1=面積が1m2のガスバリアフィルムを透過する1日当たりの水蒸気の重さ[グラム])
程度の高いバリア性が求められています。

こうした極めて小さい水蒸気透過度を評価するには、ガスバリア性評価装置が用いられます。
ただ、ガスバリア性評価装置を校正するには、基準となる10-6g m-2 day-1レベルの水蒸気透過度をもつ
「標準ガスバリアフィルム」が不可欠になりますが、これまでそのような標準ガスバリアフィルムがなく、
測定値の信頼性自体が確保できていなかったとのこと。

今回、産総研が開発したのは、ガスバリア性評価に用いる標準ガスバリアフィルムで、
「世界最高水準」(産総研)という10-6g m-2 day-1レベルの水蒸気透過度を持つとしています。
産総研によると、従来の標準ガスバリアフィルムの水蒸気透過度よりも、1000分の1以下という微小な値とのこと。

開発した標準ガスバリアフィルムは、緻密に積層した粘土結晶の間をバインダーが埋める構造で
高いガスバリア性を誇る「クレースト」を使用。クレーストは、粘土とバインダーの混合割合などを調整して、
水蒸気透過度を制御できる素材です。今回、バインダーにポリイミドを採用し、温度40℃、相対湿度90%条件で、
水蒸気透過度が2.0×10-3g m-2 day-1になるよう調整して作製。
このクレーストを穴の開いたステンレス薄板に熱プレスにより直接接合して標準ガスバリアフィルムを作製しています。
接合に接着剤を用いていないため「水蒸気が接着剤を透過することはない」(産総研)とのことです。

「ハイバリアフィルムを評価する基準に」

ガスバリア性評価装置の測定有効径が90mmの場合、ステンレス薄板の穴径を20mm、6.5mm、3.5mmとすると、
それぞれ、1.0×10-4g m-2 day-1、1.1×10-5g m-2 day-1、3.1×10-6g m-2 day-1の
標準ガスバリアフィルムとなることが、設計上見込まれるとしています。

AIST_standard_high-gasbarrier_sample_3kind_image.jpg
今回開発した三種類の標準ガスバリアフィルムの裏面。
左から穴径20mm、6.5mm、3.5mm 出典:産業技術総合研究所

産総研では、開発した標準ガスバリアフィルムの水蒸気透過度を比較用のPETフィルム試料とともに、
ガスバリア性評価装置を用いて確認。その結果、「設計値通りの水蒸気透過度であることが確認できた」としています。

AIST_standard_high-gasbarrier_measurement_image.png
クレーストを用いた標準ガスバリアフィルムの水蒸気透過度の確認実験結果。
比較のため、PETフィルムを用いて作製した試料の結果を示している 出典:産業技術総合研究所

産総研は、「今回開発した標準ガスバリアフィルムは、その他のさまざまなガスバリア性評価装置の
試料ホルダーに取り付けることができるので、それらについても、同様の測定結果が得られるか確認するための
比較実験を行う。また、国家標準にトレーサブルな標準ガスバリアフィルムを供給できる体制を整えていく予定。
標準ガスバリアフィルムを用いることで得られる信頼性の高い水蒸気透過度の測定は、
有機ELディスプレイや有機太陽電池などに使われるハイバリアフィルムを評価する基準となり、
これら製品の品質管理や長寿命化に貢献すると期待される」としています。

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