スマートウエアが介護人材不足を救う

日経テクノロジーオンライン
スマートウエアが介護人材不足を救う

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<深刻さが増す介護問題>

高齢者人口の増加とともに介護問題の深刻さが増しています。
厚生労働省によると、2010年に国内の要介護認定者数は500万人を超え、
75歳以上の人の3人に1人は「要介護」となっています。一方で、それをサポートする介護人材が不足しており、
団塊の世代が75歳を上回る2025年には介護職員の不足が37万7000人に上ると推計しています。


そこで期待されるのが、ICTを活用した「見守りサービス」です。ICT企業を中心に今後参入が増えることが見込まれ、
「競争によって付加価値の高い特徴のあるサービスが投入される」
(奈良県立医科大学 産学官連携推進センター 研究教授の梅田智広氏)と見られています。

<高齢者に受け入れられるには>

ただ、実際には、既存の高齢者向け「見守りサービス」の契約者数は伸び悩んでいる模様です。
原因としてサービスの認知度の低さもありますが、よく指摘される点として、
高齢者に心理的な負担をかけるものがまだ多いという現状があるようです。

<着るだけで生体情報を計測>

その一つの解決策として注目されるのが、衣服に導電性やセンシング機能を持たせて、
着るだけで生体情報を計測できるようにする「スマートウエア」です。

スマートウエアには大きく二つのタイプがあります。
一つは通常の衣服にフィルム状の導電性素材を後から張り付けたもの、
もう一つは衣服に織り込む繊維自体に導電性を持たせたものです。
着心地や洗濯の繰り返しに対する耐久性などの面では、後者の方が有利とされ、
日本国内の繊維メーカーが競って開発を進めている状況です。

東レはNTTとの共同開発により、ナノファイバーに高導電性樹脂をコーティングした
繊維素材「hitoe」を2014年1月に公表しています。

>東レ・NTT、着るだけで心拍数・心電波形測定できる新機能素材を開発(追記)

2015年8月には、東レ、日本航空、NTTコミュニケーションズが共同で、この素材を採用したウエアを用いて、
空港の屋外作業者の体調を管理する安全管理システムの実証実験を開始しています。

>過酷な現場を“服”が見守る-JALなど、那覇空港で生体センサー機能繊維を実証

グンゼは、肌着などに用いるニット素材に導電性を持たせています。
ニット糸にAgめっきをしたタイプと、エナメルCu線と複合化したタイプの2種類を開発しています(図1)。
ニット素材のため柔軟性があり、伸縮を繰り返しても導電性の変化が少なく
「伸縮試験で既に1万回をクリアしている」(同社)とのこと。
このニット素材を採用したウエアを使い、着た人の姿勢改善や肩こり予防のサービスを
提供するシステムを、NECと共同で開発中です。

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図1:グンゼの導電性繊維素材の抵抗変化
グンゼは、導電性ニット素材を伸縮させた時の導電性繊維素材の抵抗変化を、
2016年1月13~15日に開催された「第2回 ウェアラブル EXPO」でデモンストレーションした。
上がAgめっきタイプ、下がエナメルCu線複合化タイプ

>布なのに演奏できる……未来のピアノ鍵盤は「ニット」布地 グンゼが開発、応用製品を模索

ミツフジは「ナイロン」などの合繊繊維にAgをコーティングし導電性を持たせています。
もともとAgの抗菌・防臭効果を生かした靴下などに用いる繊維素材として事業化しており、
その技術を生体情報の計測用に応用。繊維のAgコーティングでは長年蓄積した加工技術があるため、
製品ごとの導電率のバラつきが少ないとしています。

<「パジャマ」でも大丈夫>

この技術力が評価され、仏BioSerenity社と共同で、帽子とシャツを組み合わせたシステムを開発しています(図2)。
2016年1月には欧州で医療機器の承認を獲得。欧州では生体情報を基にてんかん発作を事前に検知し
アラートを出すといった用途に使われるとのこと。

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図2:ミツフジと仏BioSerenity社が共同開発した医療用ウエア
導電性繊維を使って仕立てた帽子とシャツを使い、組み込まれたセンサにより心拍などの生体情報を測定し、
てんかん発作のアラートを出すシステムを開発した。「第2回 ウェアラブル EXPO」より

さらに、ミツフジは様々な太さの導電性繊維を品ぞろえしており(図3)、
ウエアにする時のデザインの自由度が高いとのこと。
一般に「スマートウエア」は一定の導電性能を維持するため、体との密着度の高いウエアに
仕立てなければならないことからスポーツ用が多く、高齢者に向けた展開はそこが難点となっていました。
これに対し、同社の導電性繊維を使うと、「パジャマのようなデザインでも生体情報の波形が
きちんと取れるものができる」(同社社長の三寺歩氏)とのこと。

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図3:さまざまなデザインのウエアに対応
ミツフジは、太さの異なる糸状や幅の異なるテープ状の導電性素材を用意し、
さまざまなデザインのウエアに対応できるようにした。「第2回 ウェアラブル EXPO」より

>ヘルメットで脳波を計測し熱中症を予防  AgXとスターライト工業、導電性繊維で編んだニットを電極に応用

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