大比表面積・高結晶性炭素材料、東北大らが開発

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大比表面積・高結晶性炭素材料、東北大らが開発

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開発した高結晶性オープンセル型ポーラス炭素粉末の外観
出典:東北大学

東北大学 金属材料研究所の加藤秀実教授は2015年11月、TPR工業及び電気機器メーカーと共同で、
高い結晶性と大比表面積を併せ持つオープンセル型ポーラス炭素の開発に成功したことを発表しています。
研究成果は、リチウムイオン電池の性能向上や空気電池など次世代蓄発電デバイスの開発に
つながるものと期待されるとのこと。

電気二重層キャパシタやリチウムイオン蓄電池、燃料電池などの蓄発電デバイスでは、
電極や集電体などの部材として、カーボンブラックや活性炭、黒鉛(グラファイト)といった炭素材料が用いられます。
今回開発に成功したオープンセル型ポーラス炭素もその1つとなります。
従来材料に比べて、大きな比表面積と接点抵抗の低減を同時に達成できるとしており
さらに、大量生産が可能であることも大きな特長であるとのこと。

加藤氏らの研究グループは、酸・アルカリ水溶液の代わりに金属溶湯を用いた独自の新しい脱成分技術を
開発しており、これまでにさまざまな卑金属のオープンセル型ナノポーラス体を製造してきました。
今回はこの脱成分技術を炭素材料に応用しています。

研究グループは、炭素とマンガンから成る合金(炭素マンガン合金)を800℃のビスマス溶湯に浸漬し、
マンガン成分のみをビスマス溶湯内で選択的に溶出させる脱成分処理を行っています。
ここで得られた試料を硝酸水溶液中に浸漬し、ビスマスなど炭素以外の成分をイオン化して除去。
これをろ過し、純水洗浄、乾燥することでポーラス炭素粉末の回収に成功したとのことです。

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金属溶湯脱成分法を用いた高結晶性オープンセル型ポーラス炭素の作製工程イメージ
出典:東北大学

開発したポーラス炭素は、炭素材料の作製プロセスとしては、比較的低温(800℃)でありながら、
高い黒鉛化度を有することが分かったとのこと。
このポーラス炭素を走査型電子顕微鏡で観察したところ、気孔率が大きい部分と小さい部分を確認。
気孔サイズの分布測定から、開発したポーラス炭素は3nm近傍をピークとするメソ気孔分布と、
30nm近傍をピークとするメソマクロ気孔分布からなるポーラス構造であることが分かったとしています。
これらの構造から、電気化学的反応に必要不可欠となるガスや液体等の物質輸送性に
優れているとみられるとしています。

また、開発した高結晶性オープンセル型ポーラス炭素に対して、複数の高温条件で2時間の
黒鉛化処理を行ったところ、黒鉛化処理温度が上昇すると、黒鉛化度はさらに向上。
これに対して、全気孔体積および比表面積の減少は極めて小さく、脱成分後と同等の
比表面積を維持できることが分かったとのことです。

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開発した高結晶性オープンセル型ポーラス炭素粉末のX線回折図形(左)と、ラマン分光スペクトル(右)
出典:東北大学

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高結晶性オープンセル型ポーラス炭素粉末の走査電子顕微鏡写真。
上部がα-Mn相由来の高気孔率部、下部はMn23C6相由来の低気孔率部
出典:東北大学

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窒素ガス吸着法で測定した高結晶性オープンセル型ポーラス炭素粉末の気孔径分布。
黒線が800℃脱成分後、青線、緑線、赤線は黒鉛化処理後(青線:1773K、緑線:2273K、赤線:2773K)
出典:東北大学

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高結晶性オープンセル型ポーラス炭素の比表面積(SBET)、全気孔容積(Vp)及び、
黒鉛化度の指標となる(002)面間距離(d002)と、DバンドとGバンドピークとの強度比(ID/IG)
出典:東北大学

研究グループは、開発した高結晶性オープンセル型ポーラス炭素と、アセチレンブラック(AB)及び黒鉛の
実用炭素材料について、体積抵抗率と密度の関係性を比較。
この結果、いずれの材料も密度の上昇により体積抵抗率は減少するものの、
高結晶性オープンセル型ポーラス炭素は、ABよりも体積抵抗率が低くなることが明らかとなっています。
さらに、黒鉛化処理を行うことで、天然黒鉛と同等の体積抵抗率に低減させることに成功しています。

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粉体抵抗率測定装置を用いて測定した高結晶性オープンセル型ポーラス炭素
(赤線は脱成分後、青線は黒鉛化処理後[2773K])、黒鉛(緑線は人造、橙線は天然)及び、
アセチレンブラック(黒線)の体積抵抗率と密度の関係
出典:東北大学

研究グループでは、高結晶性オープンセル型ポーラス炭素の黒鉛化処理と賦活処理を
効率的に組み合わせることによって、黒鉛化度と比表面積のさらなる改善を目指していく予定です。
なお、TPR工業はサンプル品の出荷を行うため、製造設備の導入を完了しています。
工業化に向けて生産体制を整えるとともに、各種用途に適応する高結晶・大表面積のポーラス炭素を
量産するために、新たな製造設備の開発にも着手しています。

東北大学ニュースリリース
高結晶性と大比表面積を併せ持つオープンセル型ポーラス炭素を開発
-現行エネルギーデバイスの高性能化と次世代エネルギーデバイスの開発促進-



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この記事へのコメント

トライボシステム展望 - エンジンフリクション - 2017年04月01日 11:04:47

現在の機械構造材料の最大のネックは摺動面。
いくら機械的特性(材料強度・硬さ)が高くても、材料というものは摩擦に弱い。
そのため潤滑油が存在する。しかしながら、それでも弱いので
コーティングをする。
しかし、日立金属が開発した自己潤滑性特殊鋼SLD-MAGICは
コーティングレスで摩擦に強いことが特徴。そのメカニズムは
潤滑油と鉄鋼材料が相互作用を起こし、グラファイト層間化合物(GIC)
という高性能な潤滑物質を作るためであることが、日立金属技報
2017で公表された(CCSCモデル、炭素結晶の競合モデル)。
これにより機械部品の設計は小型化され、摩擦損失と軽量化の同時
解決が見込まれ、低フリクションによる自動車の燃費向上に大いに寄与することが期待されている。

境界潤滑強度の謎 - 某職員 - 2017年05月12日 10:43:56

日立金属が発表した炭素結晶の競合モデル(CCSCモデル)という境界潤滑理論は破壊的にイノベーションの一つと思われる。
 なぜなら、いままでボールベアリングを人類はせっせと作っていたが、それがナノ結晶レベルの自己組織化能力により、等価の機能を有するGIC(グラファイト層間化合物)結晶を生成させる特殊鋼からだ。
 これは明日の機械産業の在り方を変えてしまうかもしれない革命と思う。この理論、ダイヤモンド理論ともいうがそれ以上のものだと思う。

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