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割れた金属配線が勝手に直る、早大が自己修復技術を開発

日経テクノロジーオンライン
割れた金属配線が勝手に直る、早大が自己修復技術を開発

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図1 亀裂の入った金属配線自己修復
金属配線を形成したフレキシブル基板を円筒に貼った状態で、配線の亀裂の自己修復の実験を行った。
亀裂が自己修復され、配線が導通したことでLEDが点灯している。(写真:早稲田大学

早稲田大学理工学術院准教授の岩瀬英治氏らの研究グループは、
亀裂(クラック)が入っても自己修復する金属配線技術を開発したと報じられています。


電界トラップと呼ぶ現象を利用しており、金属ナノ粒子でクラックを架橋させることで
数十秒ほどで亀裂が自動修復するとの事。
フレキシブル基板や伸縮配線といった配線が切れやすい部分、
建物内に埋め込んだセンサーや海中に設置した機器など交換や保守が難しい機器などに向けるとしています。

亀裂の修復には、金属ナノ粒子を分散させた液体やゲルを用いており、
金属配線を覆うように配置しておきます。
亀裂が生じた際には、金属配線に交流電圧を印加すると、液体やゲル中にある金属ナノ粒子が
亀裂付近に生じた電界により引き寄せられ、亀裂部分が導通するようになるとの事。
印加電圧による電界は亀裂部分のみに生じるため、他の部分には影響を与えず
亀裂を選択的に修復できるとしています。

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図2 電界トラップ現象で金属ナノ粒子を集める
基板上の金属配線の上に、金属ナノ粒子が分散した水を配置しておく。
クラック(亀裂)が発生すると、その部分に電界が発生し、金属ナノ粒子が引き寄せられ、
亀裂を修復する。(図:早稲田大学

実験では、100kHzで3.0Vの交流電圧を印加したところ、0.5μm幅の亀裂を44秒で修復(図3)。
また,3.2V以下の交流電圧では最大で1.3μm幅の亀裂を修復できたとの事。
修復後の配線のインピーダンスは、亀裂のない金属配線と同様の数十Ω程度だったそうです。

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図3 電界トラップ現象で金属ナノ粒子を集める
亀裂のある配線に電圧を印加すると、44秒ほどで亀裂が修復され、
配線が導通することでLEDが点灯した(a)。
例えば0.2μm幅の亀裂は、交流の印加電圧が1.65Vになると、
電界トラップにより金属ナノ粒子が引き寄せられ修復が始まる(b)。

金属ナノ粒子および金属配線には、今回は金(Au)を用いていますが、
「原理的には、どのような金属でも電界トラップは起きる」(岩瀬氏)との事。
ナノ粒子の直径は40nmだそうです。

プリント基板の配線材料として一般的な銅(Cu)での自己修復については検討中との事。
「銅の場合、水の中ではナノ粒子の表面が酸化するため、これを取り除くための工夫が必要。
ジュール熱によりナノ粒子を融かすなどの方策を検討している」(岩瀬氏)としています。

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図4 最大1.3μm幅までの亀裂を修復可能
ガラス基板上の配線に加えて、シリコーンゴム基板上の配線についても修復が可能である。

金属ナノ粒子を分散させる水については、そのままでは機器内の他の部分に浸水したり、
蒸発してしまったりする可能性があるため、シリコーンゴムによるマイクロ流路などにより封止したり、
ゲルに置き換えたりすることを検討しているそうです。

亀裂ではなく隣同士の配線が電界トラップにより短絡することを防ぐには、ゲルの場合、
配線の面全体に敷くのではなく、配線と同じようにパターニングして配置するとの事。
面全体に敷く場合に隣同士の配線の短絡を防止するには、5μmほどの距離があれば
3.3Vほどの印加電圧において配線間の絶縁を保てるとしています。

岩瀬氏らは、今回発表した金属ナノ粒子による電界トラップだけでなく、
イオンマイグレーションを利用した配線の自己修復も検討しているそうです。

電界トラップは従来、金属ナノ粒子の特性を計測する用途で利用されてきたとの事。
「どちらかというと、計測では単一のナノ粒子を利用することが多く、今回のように多数のナノ粒子を
修復に利用する研究はなかった」(岩瀬氏)としています。

金属ナノ粒子には、ファンデルワールス力と静電反発力、誘電泳動力の3つが働きますが
今回の技術で利用しているのは、このうち誘電泳動力との事。
ファンデルワールス力と静電反発力は液体や粒子の種類で決まる一方、
誘電泳動力は亀裂間の印加電圧の大きさに依存します。
誘電泳動力が、ファンデルワールス力と静電反発力の合計より大きくなった時点で
電界トラップが発生し、周囲の金属ナノ粒子が亀裂部分に集まるようになります。
亀裂が架橋された後は、配線が導通することで亀裂部の電位差がなくなり、
修復は自動的に止まるという仕組みとなっています。

今回の実験での印加電圧は3.2Vですが、より大きな電圧を印加すれば、
より幅の広い亀裂を修復できる可能性もあるとの事です。
岩瀬氏は「今回は実験の都合上、配線の厚みが100nmと薄かった。高い電圧を印加すると
配線がジュール熱で融けてしまうため、印加電圧を3.2Vに抑えた。通常のプリント基板で用いるような、
より厚い配線であれば、より高い電圧での自己修復も可能だろう」と語っています。



応用範囲も広く、また逆転の発想が元になっている面白い技術だと思います。
文中にあるイオンマイグレーションも配線間の短絡にとっては厄介な現象で
材料にもよりますが実験してみると数秒で配線間が短絡するのが確認できます。
スピードは速く、目で見て認識できるほどです。

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